おもちもちもち

娘、おもちとの手さぐり育児記

バイバイ、パイパイ。

その日は突然やってきました。


離乳食が1日3回になり、そのサイクルが軌道に乗り、しっかり定着した今月初め頃。

麻疹騒動の時書いたように沖縄に行った直後、いつも通りの日々へ戻ってきたある日の夜、すっかり添い寝トントンで眠るようになったおもちを寝かしつけている最中、ふと気付きました。


あれ、そういや今日、1回も授乳してない…?


思えば夜間断乳してからは夜の授乳は無くなっていたし、数日前からは日中おもちがぐずった時など1日1、2回ほどしか乳の出番はなく、それも気付いた私が促した時だけ。

そして私が気付かなかったこの日、本当に一度も授乳していませんでした。


それに気付いた時にはもうおもちはウトウトと眠りに落ちつつあり、驚きと感慨を持ってその横顔を眺めながら、同時に

あぁ、まだ行かないで…

と急にとても寂しい気持ちになりました。


授乳をやめる時期については全く考えておらず、恥ずかしい話私自身が乳離れがとても遅かったこともあり、本人が欲しがるのなら夜以外は特に意図的に断乳するつもりはありませんでした。

それが、まさかの突然の卒乳。

乳離れについては多くのお母さんが苦労するという話を聞くので、その点とてもありがたく喜ばしい話ではあるのですが、こんなに早くその日が訪れるとは思わず、私の心がついてこられなかった。


思い返せばまず臨月の頃、ここから乳が本当に出るのかと首を捻り。

産後初めての授乳で、ふんにゃふにゃのおもちが、誰にも教わってないはずなのにちゃんとカパッと口を開けて乳に食らいついてきたのを見て、「こんなグニャングニャンの激小さい生き物でも、既に生きる意志と本能を備えているのか…」と感動して一瞬会陰切開の痛みを忘れ。

他のお母さんと比べて明らかに乳が出ておらず、フギフギ泣くおもちに申し訳なくて、ひよこクラブの授乳の悩み特集を隅々読みまくって、とにかく乳が出るようにと無理してでもご飯をガツガツ流し込み。

やっと張ってきた乳の乳腺開通のために、陣痛より痛い看護師さんの鬼のマッサージに目を白黒させながら歯を食いしばって耐えたり。

退院後、片乳側面の謎の焼けるような激痛に数週間悩まされ、何度相談して診察してもらっても原因が判らず、結局いつの間にか消えていた事もあり。

頻回の慣れない授乳ですぐに乳頭が痛くてたまらなくなり、あらゆる対策を全て試し、全回復する時間もなくすぐにまた次の授乳時間になって、痛みに備えるため深呼吸してから授乳に臨んだり…

昼夜関係なく爆泣きのおもちに白目向きながら授乳して。

初夏の青々とした実家の庭を眺めながら、

「いったいこれはいつまで続くんだろう…」

となんだか泣きたいような気持ちになりながらぼんやりした日もありました。


数えきれないほど繰り返してきたその時間。


おもちはぐんぐんと力強く乳に食らいついて、腕が余るほど小さく軽かった体は少しずつ確実に大きく重くなっていって、体勢が辛くなると授乳スタイルが変わったりして。


女の子なのに髪の毛がとっても薄くて、授乳しながら産毛のような髪を撫でて

「早く生えろー、男の子と間違われなくなれー」

と念じていた頭はそれなりに髪が伸びて(未だに男の子に間違われる事もあるけど笑)。


初めての離乳食の時は、甘酒のようなシャバシャバの10倍がゆを一口口に含んで、どうかな!?と注目する私たち両親の期待に応えてか「ううううぇーーーーん!!!!」と大泣きして、まだまだおっぱいがメインになりそうだねーなんて笑っていたのに、いつの間にか一丁前に3回食平らげるようになって。


大きくなったんだな。

あっという間だな。

今は赤ちゃんの君は、すぐに大きくなってしまうんだな。


そんなことをしみじみ考えながら、常夜灯だけ点いた寝室の暗がりの中、おもちの寝息を聞きながら、涙が出ました。

成長はとっても嬉しいけれど、やっぱり寂しくなってしまう部分も大きい。


辛抱のない私にはしんどく感じてしまう事が結構あって、その度に「早く大きくなってくれればいいのに」「早く楽になりたい」と、そんなことばかり考えてしまいました。

でも、授乳と同じように、親が子供にしてあげられること、世話を焼かなければいけないことは永遠に続く訳ではなくて、むしろとても短い期間なんだろうなぁと思います。

そしてその期間を過ぎてから、その尊さを身に染みて感じて、こんな風に寂しく思ったりするのかもしれない。


まだまだ子育ての入り口付近で右往左往する毎日で、すぐに余裕が無くなって毎日をただただ乗りきるだけの日々になってしまいがちですが、ふと気付いた時には一息ついて、おもちの今の可愛さ、今しかない姿を心に刻み付けていきたいなぁ、と思った一日の終わりでした。

ちなみにその後、数回だけおもちが授乳を要求することがあり、私もあの感覚が懐かしくもう死ぬほど授乳してやりたい気持ちに締め上げられました。

が、離乳食もしっかり食べられているし、何よりせっかく無理なく卒乳できそうなおもちを中途半端に引き留めて機会を逃してしまいそうな気がして、誤魔化し誤魔化し。


ただ実は一度だけ、おもちが体調を崩してしまった麻疹騒動の時、母乳には免疫成分があると聞いたので飲ませようとしました。

その時、最後に飲んでから1週間近く。
不味くなってたりして…と思いつつ差し出すと、大喜びで飛び付いてきたおもち。


で、ガブリ。


久々の授乳+急激に生え揃ってきた前歯の容赦ない一噛みで、乳首ギロチン、私絶叫。

おもちはおもちで私の反応に驚いたのか、やっぱり不味かったのか分からないけれど、すぐに口を離して、顔をくっしゃくしゃにして号泣。。


それを見て、ああこれは本当にもうこの子には授乳が必要ないんだな、と納得して、わんわん泣くおもちを抱き締めて、


「今まで飲んでくれてありがとう。
もうさよならだね。」


と私も泣き笑いながら、背中をさすりました。


沢山思い出の詰まった、人生初の授乳ライフでした。

ありがとうパイパイ。
バイバイ、パイパイ。