おもちもちもち

娘、おもちとの手さぐり育児記

てんちゃん、またね

青森編の更新が止まっている中ではありますが、どうしても今書いておきたいので。



タイトルからお気付きの方もいらっしゃると思います。

我が家の獣たち第一子、フェレットのてんちゃんがついに旅立ちました。7歳7か月でした。



まだブログには詳しく書けていませんが、8月上旬に私達は私の実家のある福井県へと移住しました。


浜松にいた頃から、少し足腰が弱っているのを感じていましたが、少々ふらつく以外はとても元気でした。けれどセーブルでふかふかだった毛並みは、増えた白髪により全体的に白っぽくなり、細い尻尾が禿げてきているのを見て、お前ももうすっかりじいちゃんだなぁ、といちさんと寂しく思っていました。


そして引っ越し後すぐお盆になり、親族が実家に集まっているので、有給休暇消化中の私達も、獣たちを連れて実家で過ごしていました。


が、その辺りから、てんちゃんの息が深く、少ししんどそうな様子が表れ始めました。そして、今までは無かった、トイレの失敗。


足がすっかり弱っている様子だったので、今までは何でもなかったトイレの段差も乗り越えるのが困難になったようで、排泄物で体が汚れてしまうことが増え、これはいよいよ年なのかなぁとまた寂しく思いつつ、若い頃よりかなり筋肉の落ちた、力ない身体を洗ってやったりしていました。


我が家に戻ってからしばらくは、たまにトイレを失敗しつつもほとんど普段と変わらない様子でした。まぁ、歳のせいだろう、元気もあるし、きっと大丈夫、と思っていました。私もいちさんも、そう思いたかった。


けれど、思いも空しくてんちゃんは急激に弱っていき、息も体全体を使うような深いものになっていったため、病院へ連れて行こうと言っていた矢先。


亡くなる当日の朝、先に起きたいちさんに呼ばれてケージ内を見ると白い泡のような吐瀉物があちこちにあり、その間もてんちゃんは聞いたことのない声を上げながら、口から次々泡を吐いて、ぐったりとしていました。
これまで病気らしい病気はほとんど無かったてんちゃんのその姿に血の気が引き、慌てて近くの小動物も診療対象の動物病院を検索。すぐにいちさんに連れて行ってもらうことになりました。


この時、2月に亡くなったらんちゃんの状況と酷似していて、おもちがいる為留守番となる私は出発前、玄関で小さな移動用ケージに入ったてんちゃんを撫でながら、祈る気持ちで


「今日は無理でも絶対帰っておいでね、母ちゃんも待ってるからね。」


と声を掛けました。


ふう、ふう、と弱弱しく、でも頑張って息を続けていた、どんなに老いて弱っても可愛い姿。
これが私が見た最後のてんちゃんでした。



送り出す時はこう言ったし勿論本心ではありましたが、正直、過去の経験から、もう駄目かもしれないという気持ちは強くありました。
年齢的なこと、明らかに弱った状態。処置をするにも限界があります。やれることはきっと少ないし、仮に今回助かってもきっと長くはない。


けれど、前日も、つらそうではありながらも、ケージを開けると頑張って身体を起こして自力で出てこようとして、撫でる私やいちさんの手をぺろぺろ舐めてくれていました。
死ぬ気なんてさらさら無い姿に、ひょっとしたらまた元気に復活して帰ってきて、あちこち跳び回るんじゃないかなぁ、と、信じたい気持ちも強く強くありました。



昼近くになっていちさんが帰ってきて、検査のため一度預かりになったこと、脱水になっているのと肺の辺りに水が溜まっている(おそらくそれで呼吸が苦しい)のはわかるがはっきりとした原因が分からないこと、血液検査の結果は特別数値は悪くないことなどを聞き、少し安心できました。


検査結果を聞くのは午後ということになりましたが、その日私は訳あって午後から外出し、帰宅は翌日になる予定でした。
本当は一緒にてんちゃんを見に行きたい気持ちで一杯でしたが、いちさんの厚意もあり、出掛けることにしました。きっと大丈夫だと、思ってしまった。帰ってくる頃には、あの子はまたきっと元気にここにいる、と。


夕方いちさんから来たラインでは、てんちゃんが一時的に帰れるようになり一緒に帰宅したこと、詳しい検査は外部機関での確認になるため時間を要すること、明日から投薬での治療になることを教えてもらい一安心でしたが、一緒に送られてきたてんちゃんの動画はやっぱりしんどそうに息をしていて、胸が苦しくなりました。早く帰らないと、と焦りました。



そのたった数時間後。


いちさんから着信が入りました。
慌てて出ると、荒い息と、聞いたことのないくらい取り乱したいちさんの涙声で、一瞬で解りました。



「てんちゃん  死んじゃった・・・」



ああ、とだけ声が漏れましたが、力が抜けて、しばらく何も言えませんでした。

ただ見上げた空に月が綺麗に浮かんでいて、真っ白の頭の中、ああ、こんな月が綺麗な日にてんちゃんは行ったんだな、と呆然と考えていました。
不思議なくらい、その時は何も、悲しいという気持ちすら湧いてこず、ただただぼんやりとして、電線にかかる月を眺めていました。



いちさんの話では、風呂に入っている間に何かバタバタと聞こえ、戻ってケージを見ると血交じりの水を吐いたてんちゃんが横たわっていたそうです。慌てて夜間救急の動物病院を探したけれど、その間に心臓が止まり瞳孔が開いてしまったとのことでした。


最後苦しい中で死なせてしまった、と彼は泣いていました。俺がいたのにごめん、と。


けれど、きっと誰がどう頑張っても結果は変わらなかっただろうし、私は最後にてんちゃんの傍にいちさんがいてくれて本当に良かったと感謝しかありません。
私が、いなきゃいけなかったのに。



翌朝、帰宅すると、綺麗に掃除されたケージに、保冷剤を枕にタオルを体に掛けてもらって、静かに目を閉じているてんちゃんがいました。
嫌でももうここにいないことを思い知らされました。抱き上げると、ひんやり冷えた体と、熟睡した時のようにだらりと垂れ下がる首で、余計に思い知らされて、一気に涙が溢れました。


撫でながら見ると、いちさんがシャンプーも耳掃除もしてくれて、いつも暴れて難しかった耳の細かい部分もすっかり綺麗になっていて、お前良かったなぁ、父ちゃんにキレイキレイしてもらったんか。と話し掛けながら何度も撫でました。おもちも、わかっているのかわかっていないのか、なでなでしてあげて、と言うと優しくてんちゃんを撫でて、触れたことが嬉しかったようで笑顔になっていました。


死んだって、てんちゃんは可愛かった。おもちにも、優しいお兄ちゃんだった。ケージ越しにしかあまり接触させてあげられなかったけれど、おもちが多少自我のある頃までてんちゃんがいてくれて良かった。


夜はおもちが寝た後、いちさんと一緒にてんちゃんを挟んで酒盛りをしながら、てんちゃんの思い出話をして一緒に笑ったり少し泣いたりした。
てんちゃんを撫でながら、「もし良かったら、次は母ちゃんのお腹に戻っておいで。」と伝えました。



翌日、火葬場に向かう車の中、いちさんと「てんちゃんらしい」と選んだピンクと黄色のガーベラを詰めた箱の中で眠るてんちゃんを撫でながら、あぁこの子も焼いてしまわないといけないのか、嫌だな、とぼーっと考えていました。


車が火葬場に着いた瞬間、もう随分泣いたから出ないと思っていた涙がまた溢れそうになりました。
着いてしまったら、もうお別れしなきゃいけない。
このまま手元に残せたらいいのに。ずっとずーっと、一緒にいられたらいいのに。
解っていても、とてもつらくて寂しいことでした。



施設に入り受付を済ませ、体重を測るために箱から出すと、2人のスタッフの方が「わぁー可愛い!!」とてんちゃんに言ってくれて、その瞬間にこらえ切れずにまた涙が溢れて止まらなくなりました。
最後に私たち以外にも可愛いって言ってもらえて、本当に本当に嬉しかった。お心遣いが本当に嬉しかった。


最後のお別れの時、沢山の想いを込めて、頭から尻尾まで何度も何度も撫でました。
お棺を閉じるボタンを押して、ゆっくりと閉まっていくお棺に見えなくなっていくてんちゃんを、目に焼き付けました。


収骨まで時間があるということで一度外に出ると、施設の煙突から陽炎が立っていて、あぁあれがてんちゃんだね、と笑い合えました。とても天気の良い日で、すでに秋へ移ろう薄い雲が高く棚引いて、これならてんちゃんは上っていきやすそうだねーと少し空を見上げました。


焼き上がったお骨は想像以上にしっかりと残っていて、生物学大好きな私はもう悲しみより興味が勝ってスタッフさんの説明をふんふんと鼻息荒く聞いていましたが(変な客)、脚の位置や指の骨、爪が残っているのを教えてもらうと、生前のてんちゃんが重なってまた泣けてきました。
お前、指の骨も残してくれたんだな、爪切るの毎回大変だったわ、なんて思いながら、白い小さな一つ一つをピンセットで慎重に骨壺へ納めていきました。


骨壺は想像していたより大きくて、なんだよてんちゃん生きてた頃と大きさあんま変わんねえじゃん!といちさんと笑って、それを抱えて帰路につきました。
てんちゃんにもおもちにも優しく温かく接し、私達の気持ちにも寄り添ってくださったペットメモリアル・ラブの方々には本当に感謝しています。ありがとうございました。




今、いつものケージの中に、遺影と共にてんちゃんは静かに眠っています。


せっかく自由になったんだから出してやれよ!って感じかもしれませんが、いつもこの位置だったので、他の場所は落ち着かなくて。何より、すっかり手癖の悪くなったおもちが何をするやら・・・想像するに恐ろしい(笑)


まだまだ、近くを通るたびてんちゃんうんこしてないかな、てんちゃん大丈夫かな、なんていつものように無意識に思って覗き込んではハッとする日々ですが、いつかちゃんと受け止めて、また笑って話し合えると思います。



学校を卒業してすぐてんちゃんを迎えて、就職、結婚、数々の転勤、出産、そして転職とこれまでの私達夫婦の人生をずっとともに生きてくれたてんちゃん。
もう少し長く一緒にいたかったけれど、あの生意気なベビーがこんなにおじいちゃんになるまで頑張って生きてくれて、私もいちさんも幸せでした。



らんちゃんにはもう会えたかな。二匹でまた一緒に丸まって眠っているんじゃないかなぁと思います。


7年7か月、本当にありがとう。あの日選んだのがてんちゃんで本当に良かった。


次こそ、約束は違えないから、もしてんちゃんが良かったら、父ちゃんと母ちゃんの本当の子供として戻ってきてくれたら嬉しいな。考えといてね。



またね、てんちゃん。


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